残るのは“想い出”と “人脈”…⑤

退職後は”ないないづくし”  その1

68歳の和夫さん(仮称)は上場企業を専務取締役で退職。
以前なら「顧問」の肩書で75歳まで残れましたが、昨今の厳しい状況なので、やめざる得なかった。
彼は人事部長も経験し、1,000人規模の希望退職やリストラも経験しました。
それらの寄与もあり68歳まで残れました。

問題は、彼の退職後の生活ですね。
様々な会合やイベントなどに出かけても、「以前の企業の名刺」を配り、当たり前のように上席に座っています。
これは身についた習慣、体が覚えた習性でしょうか。

「昔の名刺」を配り、絶えず「上から目線」

多くの参加者は彼の「デカイ態度、上から目線、名刺男」にうんざり。
イベント終了後、有力メンバーによる居酒屋の飲み会。
彼が話題の中心に。
「辞めれば、みな同じよ。前専務だから、尊大な態度をとられては、参加者は嫌がりますね」や「あの” 上から目線が気に食わない」、「リストラ執行者だから、クライ、冷たいオーラーがでてますよ」、「彼が参加したら楽しくないね」などの意見が噴出。

以後、様々な会合や催しに誘われなくなりました。

助言する妻を怒鳴り、反発を

家で過ごす日々が増えました。
見かねた妻(子どもは2人いますが独立して生活をしています)は「あなたは退職した人よ。専務は昔の話。いまは”ただの人”ですから」や「” 終わった人”と言う映画もありましたね」と言いますと、彼は「誰のおかげで生活ができたのだ。6000万円の退職金も俺が稼いだのだ」と怒気をこめた言葉で言い返す。

妻は「私は家事や子育てで、一生懸命やりましたよ。あなただけではないのよ。わからないの…」と主張しても、彼は知らんふり。

しかし誰からも誘いがない。
時間はあふれるほどあります。
どうしたら良いかわからない。
今までは何をするにしても、部下が段取りをつけてくれていたからです。

とうとう朝から飲酒を

思い余って、かつての部下に電話。
「常務、私も忙しい。退職されたのですから、関係も終わりです」と言われた。

もう1人電話しても同じ返事です。
「俺が可愛がって、課長や部長にしてやった恩を忘れやがって」とイライラするばかり。

ついお酒を飲み始めるのです。
それも朝から飲みます。
昼食後、夕食後と。
1日に4合以上です。

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