法隆寺の五重塔

イラストを見ながら
イラストは、秋の夕暮れ時—— マコマコが柿を頬張りながら、静かに法隆寺の五重塔を眺めている一場面を描いています。
塔のシルエットは、茜色に染まる空に溶け込むように立ち、 風に揺れる柿の香りと、遠くから響く鐘の音が、秋の深まりをそっと知らせてくれます。
描いたのは、幻想的な色彩と空気感で定評のある秋吉由美子さん。
鮮やかな色使いの中に、静けさと余韻が宿るその筆致は、 奈良の秋が持つ情緒と、心をほどくような時間の流れを見事に描き出しています。
柿食えば鐘が鳴るなり
奈良といえば、大仏と並んで誰もが思い浮かべるのが法隆寺。
「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」――正岡子規のこの一句は、芭蕉の「古池や蛙飛びこむ水の音」と並んで、俳句を象徴する名句と言われています。
柿を食べた瞬間に、法隆寺の鐘が鳴る。
その響きの中に、秋の静けさと命の深まりを感じたと評されています。
私が初めて法隆寺を訪れたのは修学旅行の時。
大学に入学後何度か法隆寺周辺の「斑鳩の道」を歩くようになりました。
友人や知人といっしょに。
塔と仏像に
世界最古の木造建築といわれる法隆寺――本堂の中の金堂には釈迦三尊、薬師如来、阿弥陀如来が安置されています。
見上げると、天人と鳳凰が舞う天蓋が輝き、線香の香りが静かに広がる。
仏像に手を合わせていると、いつのまにか心が落ち着いていくのを感じます。
それはきっと、香のアロマと祈るという行為の力なのでしょう。
お隣の中宮寺にも足を運びました。
著名な女性の庵主さんが静かに境内を見守っておられ、その柔らかな雰囲気が心に残っています。
「塔」の虜に
そして法隆寺の象徴である五重塔。
日本最古の塔、その端正な姿に何度見ても息をのみます。
医師として働き、少し余裕ができた頃、塔の模型を2つ手に入れ、今も部屋に飾っています。
眺めているだけで、あの清らかな空気がよみがえってくるのです。
見あきませんね…
さらに、斑鳩の道を歩いて法起寺へ。
三重塔の静けさは、法隆寺の華やかさとは対照的で、“ひっそりと息づく美”がそこにあります。
悩んだ時に
私は1時間ほど、ただ座って、ぼんやりと空を見ていました。
それがいつしか瞑想になっていたのかもしれません。
悩んだ時、考えが行き詰まった時は、ぜひこの「斑鳩の道」を歩いてみてほしいと思います。
太陽の光を浴び、風に吹かれながら歩いていると、心を安定させる神経伝達物質であるセロトニンが分泌され、自然の力も重なり癒されていきます。
木造の塔の美しさ、仏像の静けさ、自然の包容力――それらに触れていると、「自分は、なんて小さなことで悩んでいたんだろう!」と気づかされます。
そして、「まあ、何とかなるさ」と思えるようになるのです。
これが、私の心のリセット法です
文 夏目誠

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