マコマコ通信 No.66

石舞台の思い出

見惚れる石舞台

イラストを見て、皆さんは何を感じますか?
これが有名な石舞台です。不思議だなぁ、巨大な岩のモニュメント‥‥
私にとって、それはただの観光名所ではなく、学生時代の記憶そのものと結びついています。
奈良医科大学に入学したばかりの頃、先輩に連れられて訪れたのが最初でした。
飛鳥寺から石舞台、そして橘寺へと続く小さな旅。
今にして思えば、それは奈良という土地の懐に迎え入れられたような時間でした。

特大の方墳

石舞台は、蘇我馬子の墓と伝わる特大の方墳です。
巨石で築かれた石室は迫力があり、少し離れて眺めると、その大きさと造形の妙に圧倒されます。
けれども学生の私は、観光客のように「立派だな」と感嘆するだけではなく、もっと自由に石舞台と向き合っていました。
当時は規制もなく、石の上に登ることも、中に入って横になることも許されていたのです。
ひんやりとした石に背を預けて昼寝をした午後、静けさと大地の重みが体に沁みていき、時間が止まったように感じられました。

飛鳥大仏

飛鳥寺の大仏も、橘寺の二面石も確かに印象深かったけれど、私にとって特別な場所はやはり石舞台でした。
巨石に囲まれると、不思議と自分の悩みや焦りが小さなものに思えてきました。
まだ若く、将来への不安や重圧に押しつぶされそうになる日も多かったのですが、石舞台の中に横たわると、すべてが遠のき、ただ風と土と石だけが存在する世界に身を置けたのです。

落ちつく場所

一人で訪れることもありました。
友人たちと語り合った帰りに寄ることもありました。
石舞台は、私にとって落ちつく居場所のような存在だったのだと思います。
六十年の時を経た今でも、あの巨石のひんやりとした感触、吹き抜ける風の匂いを鮮明に思い出せます。
奈良の魅力は、観光地として整えられる前に、そこに生きていた人々の息遣いをそのまま感じられることにあるのではないかと推察します。

見上げた空の青さ!!

石舞台もまた、ただの史跡ではなく、私の青春の1ページに残る場でした。
あの頃の自分を思い返すとき、石舞台の光景がよみがえります。
石の上に寝そべって見上げた時の空の青さ、石室に横たわり感じた安らぎ――それらは今も感じられます。

皆さんの安らぎの場所はどこでしょうか?

文 夏目誠

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